解放された世界の感想

古典SFの巨匠でH・G・ウェルズはいろいろな作品を発表していて、「タイムマシン」、「モロー博士の島」、「透明人間」、「宇宙戦争」などがありますが、私が個人的にこれはという作品は「解放された世界」です。なぜこの作品を取り上げようかと思いますと、第一次大戦前に発表された作品ですが、まるで第二次大戦を予言したような内容で、「戦争を終らせるための戦争」にも予言めいた内容がありますが、「解放された世界」の方がのち日本に影響を与えていると思いますのが、予言めいたといいましたが、本書は別に予言書ではなく、当時の科学知識で書いたものだと思います。どうしても昔の小説を現代文に翻訳すると、単語とかその当時使われていたのかよくわからないのですが、例えば原子爆弾という名前は当時どういう名前だったのかよくわからないといいますか、現代用に翻訳したのでしょうか。
この作品のお話の初めの方は、主人公であるバーネットが貴族から無一文になり、物乞いをしてたら世界大戦が起こり、戦場に行くというところの話は少し退屈ですが、まだ原子力が良くわからない頃に連鎖反応による爆弾、原子爆弾を発想しているところがすごいです(まだよくわからないので実際の原子爆弾とは違い起爆作動や爆発の仕方や威力などの描写が、違いますが、その発想がすごいと思いました)。さらに戦争を終わらせるために統一国家による世界政府の樹立というのはのちの国際連盟や国際連合を予感したもので(ウェルズ自体は反発しているみたいですが)、時代の先を考えた作品だと思いました。
作者のH・G・ウェルズに話を移すと、作家活動だけではなく、社会活動にも参加し、第一次世界大戦後に戦争を根絶するための国際連盟の樹立を提唱し、ワシントン会議に出席するなどすべての国家に人権と軍備の非合法化を訴えたり、ウラジミール・レーニン、ヨシフ・スターリン、フランクリン・ルーズベルトなどと会見したりしていましたり、1948年に国連で採択された世界人権宣言は、ウェルズが述べていた人権宣言についての書簡をルーズベルトに送って、それを基に作成されたサンキー権利章典がもとになったのです。されに日本国憲法は、ウェルズとルーズベルト大統領との往還書簡がルーツだという説があり、特に第9条の戦争放棄などはウェルズの考えでしたが、日本だけではなくすべての国が戦争を放棄しなければ意味がないということです。SF作家としてもすぐれていますが、人権宣言などの活動など素晴らしいことですが、一つ残念なのが彼の思想には優生学支持者という面をもっていることです。優生学というのは、進化学と遺伝学を人間に当てはめ、集団の遺伝的な質を向上させることを目的とした一連の信念と実践であり、歴史的には劣等と判断された人々や集団を排除したり、優秀と判断された人々を保護することによって行われてきて、障碍者や犯罪者、少数民族などが生殖に適さないとして結婚の禁止や強制不妊手術や安楽死などがおこなわれており、有名なのは大戦中のナチスドイツのユダヤ人に対するホロコーストですが、アメリカをはじめヨーロッパ各国や日本でも優生学に基づいた政策が、近年まで行われており、現代でも出征前診断で、親の自己選択に基づいてい非健康的と診断された胎児へ人工妊娠中絶を行ったりするといった、消極的な優生学的なことも行われております。素晴らしい人物だと思いますが、やはり優生学は、誤った考えたと思いますので、その点では残念です。まあこの世の中には完ぺきな人物などいないということでしょうし、完璧な人間・完璧な遺伝子などというのは、いないということでしょう。