ブラックマジック M-66 の感想

1987年に発表された日本のアニメーション作品(OVA)で、「攻殻機動隊」や「アップルシード」で世界的に知られる漫画家である、士郎正宗の初期の同名漫画『ブラックマジック』に収録された一編「BOOBY TRAP」を原作としています。士郎正宗自身が監督・脚本・絵コンテを手がけたことでも知られ、その後のジャパニメーションに多大な影響を与えたサイバーパンク・アクションの傑作として、今なお根強い人気を誇ります。
物語は、軍が極秘に開発した新型の自律型機動歩兵「M-66」を輸送中のヘリが墜落するところから始まります。事故により起動してしまった2体のM-66は、事前にダミーデータとして入力されていた開発者の孫娘・フェリスを暗殺ターゲットとして認識し、行動を開始します。スクープを狙うフリーの女性ジャーナリスト・シーベルは、偶然この事件に巻き込まれ、フェリスを守りながら、冷酷非情な殺戮マシンM-66から逃げ惑うことことがストーリーの大筋ですが、原作者本人が直接制作に携わっていることもありますし、共同監督として北久保弘之が監督とアニメーションキャラクターデザインを担当しているので、その点でも問題はなかったのですが、設定の一部で、一部スタッフと軋轢があったそうです。作画監督をのちに押井守監督の「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」などのキャラクターデザインや作画監督を担当することになる沖浦啓之が担当して、メカニック作画監督には今でもファンがいる「装甲騎兵ボトムズ」や「機動戦士ガンダム0083」などのメカ作画監督をしていた吉田徹が担当していて、制作スタッフは当時は若手ですが、今となっては著名なスタッフが制作された作品なのです。
タイトルにもなっている「M-66」は、本作に登場する戦闘用アンドロイドの形式番号です。一見すると女性の姿をしていますが、人間を遥かに凌駕する戦闘能力と耐久性を持ち、一切の感情を持たずプログラムに従ってターゲットを追い詰めます。その人間離れした滑らかで不気味な動きは、本作の大きな見どころの一つであり、手描きアニメーションの極致とも評されています。この作品が今なお語り継がれる理由は、その圧倒的なクオリティにあります。
緻密なメカニック描写とアクションは士郎正宗の真骨頂であり、精緻でリアルなメカニックデザインと、重量感とスピード感に溢れるアクションシーンは、CGがなかった時代に手描きで制作されたとは思えないほどの完成度を誇ります。特に、M-66と軍の特殊部隊との市街戦は圧巻で、 ジャーナリストのシーベルと少女フェリスが、神出鬼没で執拗なM-66に追われる逃走劇は、観る者に強烈なスリルと緊張感を与えます。あと特殊部隊を指揮するアーサー少佐の指揮ぶりも見どころの一つといえますし、「ターミネーター」を彷彿とさせるとも評される、追われる恐怖を描いたシンプルなプロットが、逆に作品の魅力を高めています。
後世への影響という点では、本作で描かれたサイバーパンクの世界観、リアルなメカ描写、そしてアンドロイドの脅威といったテーマは、その後の多くのアニメやゲーム作品に影響を与えました。近年では、そのデザイン性の高さからアクションフィギュア「figma」としての商品化企画が発表されるなど、新しい世代のファンにも注目されています。約48分という短い作品ながら、80年代OVAの熱気とクリエイターたちの情熱が凝縮された作品だと言えるでしょう。
個人的に原作者自身が監督や脚本などにかかわると、以前に取り上げたことのある「ガンスリンガーガール」の2期目のアニメを思い出しますが、やはり自分で直接制作にかかわると漫画とアニメ制作では勝手が違うので、その点でいろいろ苦労などがあったのでしょうが、少なくとも本作は良くできている作品だと思いました。